低価格の不用品処分
ガス燃料の代表のメタンと比較すると、水素燃料の特質が明らかになる。
すなわち、容積当たりで、ガス燃焼中で水素は最低、重量当たりで最高の発熱量となる。
燃焼速度が速く、着火エネルギーが小さく、また空気と混合したときに幅広い燃焼範囲を有する。
白金を触媒としても、メタンでは=一00℃以上の反応温度を要するが、水素は室温で燃焼が進む。
この触媒燃焼は無炎なので火災の危険が少ない。
触媒を熱放射体として利用することによって無輝炎でも熱伝達量を増大できる。
厨房などの燃焼機器へ利用されよう。
「軽い」という特質が生かされるのが航空用燃料分野である。
容積が増えるが、空気抵抗が小さい高空では欠点とならず、マッハ六の超音速機まで研究されている。
水素自動車も低公害自動車として注目されているが、限られた空間での水素搭載方法が難問で、まだ解決策が見出せないでいる。
ガソリンと比較して、容積は液体水素で一000倍、吸着合金で六倍、重量では液体水素では二倍だが、吸着合金では二五倍以上にもなる。
ガソリン同様の迅速な供給・補給システムの完成にも、まだまだ工夫が必要である。
最も期待の大きいのが発電分野である。
その代表技術が水素燃焼タービンと燃料電池である。
水素・酸素燃焼は水のみを生成し、理論比率で両者を供給して完全燃焼させれば、作動流体の水蒸気を直接加熱する理想的高効率システムとなる。
しかし、耐熱材料、水素共存の高温水蒸気に対する材料開発など課題が多い。
燃料電池は、燃焼を用いるシステムが抱える効率の限界を超える発電方法として期待されて久しい。
リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型と多くの型式が開発されてきた。
最近は、さらにプロトン伝導性の電解質としてイオン交換膜を用いる固体高分子型が大きく注目されている。
構造が簡単で、常温で作動し、起動時間も早いため、家庭用小型電源や自動車用として有望と考えられるからである。
ただ、排熱の利用が困難なことと、一酸化炭素による触媒の被毒を避けるため、天然ガスやメタノールから水素を作るとき十分な除去が必要となることなどの欠点がある。
水素エネルギーの効率と経済性こうした利用技術を生かすも殺すも水素をいかに安価に入手できるかにかかっている。
水の電気分解、天然ガスの水蒸気改質、メタノール分解、石炭のガス化が既存の製造方法である。
しかし前述したように化石燃料を離れること、電力など有用エネルギーを使用しない方法が将来は必ず必要となってくる。
熱化学分解法の熱源としては、高温ガス炉から取り出されるヘリウムが想定されるのが通常である。
日本でも試験用ガス炉が建設され、間もなく八五0℃で炉心冷却に使われたヘリウムが取り出されることになっている。
断熱反応器を利用したサイクルを接続するには十分な温度である。
太陽エネルギーの使用も検討されている。
また化学産業の排熱を利用しようと、高温排熱の代表である製鉄用高炉排ガスについての検討もなされている。
すでに述べたように、UT13サイクルは四つの反応を直列に結んだ運転が可能である。
そこで水蒸気を熱分解される反応ガスとして供給するばかりでなく、反応に必要な熱を供給する熱媒体として使用して、反応器は外部に対して十分に断熱したものにすることが考えられている。
水素の生産量と三万Nd/h、または[二・六人×一0の六乗GJ/年]として、反応実験結果に基づいて図中で菱形で囲んだ番号のところで物質と熱収支を求める。
それに基づき、プロセス全体の熱効率を求めると四八・九%となる。
火力発電所の熱効率は通常四0%以下であるので、電気分解の効率が一00%であったとしても熱化学法は電解法を上回る効率を期待できることとなる。
高温ガス炉から排出される熱源としてのヘリウムのコストをいくらに見積もるかは不確定であるが、それを変数として、右記の生産量に対して工業プラントを概念設計して水素のコスト試算を実施している。
水素一ぱ当たり三0円弱と考えられ、天然ガスからの水素と十分に競合し得る結果となっている。
水素エネルギーの特質として、エクセルギー効率が高いことがあげられる。
エクセルギーは、その系が大気環境と平衡になるまでになし得る最大仕事と定義され、次式で与えられる。
ここで、H、Sはエンタルピーとエントロピーで、温度Uの大気環境の値をそれぞれ下付の0で示す。
エネルギー総量は常に保存されるが、エクセルギーはエネルギー変換のたびに絶えず減少していく。
その物質のもつエネルギーに対するエクセルギーの割合は、その物質のもつエネルギーの質を表す。
メタンやメタノールではすが0・九二以上となるのに対して、水素のみが0・八三となる。
一方、これらの燃料を燃焼して使用することとすると、燃焼ガス温度は材料上の制約から一五00℃以下に抑えられる。
甘くみて二000℃としても燃焼ガスのエクセルギー値は0・七0である。
燃焼という変換は不可欠であるが、メタンなど炭化水素を使うかぎり、必然的に0・九二マイナス0・七0、すなわち二二%以上のエクセルギー損失が生じる。
これが水素であれば、損失は二二%にまで減少できることになる。
さらに、四モルの水素とすれば、メタン燃焼熱の八九0KJに対し一モルのメタンを改質して、て、二八六×四日一一四四KJと二九%も熱出力が増大する。
メタノールを改質しても同様に一八%の熱出が増加となる。
このエクセルギー増加分は改質のため外部からのエネルギーを加えた結果である。
しかし、メタンで七00℃、メタノールではわずか二00℃の熱エネルギーで改質が可能なのである。
ここには熱化学分解法も含めてある。
水素がクリーンであることはくりかえし述べてきた。
それに加えて、種々の廃熱や太陽などを利用し水素を得て燃料とすることは、省エネルギーシステムでもあることを強調しておきたい。
液体炭酸タンカーCO2回収地球的エネルギー・リンクシステムの選択肢現地1炭素資源-l(あれば)水素エネルギーの展望カナダ・ケベツク州の余剰電力を用いて、既存技術の電気分解で水素をつくり、液体水素としてハンブルクへ海上輸送し大規模に使おうとするユーロ・ケ一ベック計画がドイツを中心に提案され、世界的にも大きな関心を呼んだ。
しかし、東西ドイツの統一、さらにECからEUへというヨーロッパ諸国の政治体制の急変のなかで、残念ながら頓挫したままとなった。
代わってその日本版として「WElNET計画」が、サンシャイン計画の発展した形として提出され、水力、太陽光、風力など一次エネルギー源による水素製造と、輸送技術、利用技術の開発が進められている。
中東地域やオーストラリアなどの砂漠における太陽エネルギーを利用した水の電気分解による水素製造、液体水素の日本への輸送、そして前節に述べた各種の利用技術の組合せが想定されている。
このとき、液化が必要な水素に代わって常温で液体であるメタノールに変換して輸送を容易にしようとすることも選択肢の一つとなっている。
また、メタノール製造に必要な炭素源として、日本で回収された炭酸ガスを使おうというアイデアも検討されている。
水素は上述のような未来システムとしての検討段階から一部の国では実用段階に入ろうとしている。
北大西洋の島国アイスランドでは「石油を使わない国を目指す」と石油文明から一足先に抜け出そうとしている。
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